相続の法律・税務関係②
前回は相続の法律関係について整理しました。
今回は、相続の税務関係について簡単に整理していきたいと思います。
民法上の相続法と異なるところが多いので、法律の専門家である弁護士もあまり詳しくない分野です。
2 相続と税務
(1)相続税の申告等
相続税は、原則として相続・遺贈・生前贈与によって財産を取得した財産の全部について課されます(日本国籍がない、10年超国内に住所がない方や特定納税義務者はこの限りでありません。特定納税義務者については別の回にご説明します。)。
相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、納税地(原則として被相続人の住所地)の所轄税務署長に提出しなければなりません。これに遅れると延滞加算税や無申告加算税がかかる可能性があるので気をつけてください。
遺産分割がまとまらない等の理由で、期限までに自身の相続分が確定しない場合には、未分割部分を民法の規定による法定相続分の割合によって相続したものと仮定して申告しなければなりません。その後、遺産分割が確定した場合、その時点で申告のやり直しをすることができます。実際に相続した財産学が仮申告した自己の相続分より少なかった場合、遺産分割協議が整った日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求により、税金の還付を受けることができます。
相続税を納期限までに納付が困難な場合には、一定の要件をクリアすれば納期限を延長(最長20年)することができますが、この場合利子税も課されます。さらに物納も可能な場合がありますが、納付できる物は限られています。
(2)相続税の課税財産
相続税は、相続・遺贈・生前贈与によって取得した財産について課されます。
また、「みなし相続財産」といって、民法上の相続財産ではないのにも関わらず、相続税の対象となるものがあります。生命保険金、退職手当金、弔慰金等(一定金額のみ)等がこれにあたります。
(3)生命保険金について
生命保険金は、民法上は受取人固有の財産となりますが、被相続人が保険料を負担していた場合、支払われた保険金は相続税法上、相続財産とみなされます。保険料を負担していた者に支払われるべきものを当人の死亡によって相続人が受け取っているので、相続税対象とすべきだろうという考え方に基づくものですね。
そして、生命保険金は、500万円×法定相続人の数だけ、実際に受け取る保険金額から差し引いた分が相続財産とみなされます。ここでは相続人の一部が相続放棄したとしても、計算上は相続放棄した者も法定相続人の数に含まれます。
簡単な具体例で、相続財産とみなされる生命保険金について見て行きましょう。
被相続人Aとして、法定相続人は、配偶者B、子C、子Dとします。Dは相続放棄しています。
甲さんには以下の保険契約があります。
保険契約者 | 保険料負担者 | 保険金受取人 | 保険金額 |
A | A | B | 3000万円 |
A | A | C | 2000万円 |
A | A | D | 1000万円 |
Bは相続放棄をしていますが、非課税とされる生命保険金の金額については、法定相続人の数に含めます。
500万円×3=1500万円分が非課税とされます。
そして、1500万円は、実際の相続人で生命保険金額で按分します。
3000万円
乙 1500万円×3000万円+2000万円 = 900万円
3000万円 − 900万円 = 2100万円 が相続により取得したものとみなされます。
2000万円
A 1500万円×3000万円+2000万円 = 600万円
2000万円 − 600万円 = 1400万円 が相続により取得したものとみなされます。
一方、Bは、相続放棄者ですので非課税金額は適用されず、1000万円を相続により取得したものとみなされます。
この財産を基礎に相続税が計算されます。
次回は、今回の続きとして生前贈与加算や相続時精算課税制度についてご説明いたします。