成年後見③〜後見制度支援信託〜
成年後見制度③〜後見制度支援信託制度〜
今回は後見制度支援制度をご説明いたします。
1 制度の概要
後見制度支援信託とは、本人の財産のうち一部を預貯金のまま親族後見人等が管理し、その他の通常使用しない金銭を信託銀行等に信託し、その払戻等にはあらかじめ家庭裁判所の指示を要するとするものです。
この制度は平成24年、25年と段階的に導入されている比較的新しいもので、親族後見人による不正行為を受けて、本人の財産保護のために制定されました。
対象は、成年後見および未成年後見のみで、保佐・補助・任意後見は対象外となります。そして、本人の流動資産が500万円以上の場合を対象としています。そして、金銭(預貯金)に限られ、不動産・動産等は対象になりません。株式等の有価証券については、個別の事案ごとに売却・換金が適切かを判断されます。
2 支援信託の流れ
信託対象事案について、裁判所が専門職後見監督人を付さずに後見制度支援信託の検討を決定した場合は、次のような流れになります。
- 後見人の選任
審判を申し立てると、家庭裁判所が、親族後見人を選任するとともに、専門職後見人(弁護士・司法書士等)を選任します。専門職後見人を選任するのは、後見制度支援信託の利用が適切か否かを判断するためです。
権限については、親族後見人は(この時点では)身上監護のみ、専門職後見人は身上監護と財産管理となることが通例です。
⑵信託契約締結
専門職後見人は,後見制度支援信託の利用に適していると判断した場合には,信託する財産の額,親族後見人が日常的な支出に充てるための額などを設定し,家庭裁判所に報告書を提出します。
家庭裁判所は,報告書の内容を確認し,後見制度支援信託の利用に適していると判断した場合,専門職後見人に指示書を発行します。その後,専門職後見人は利用する信託銀行等に指示書を提出し,信託契約を締結します。
- 専門職後見人の辞任、親族後見人への引き継ぎ
信託契約を締結し、専門職後見人の関与の必要がなくなれば,専門職後見人は辞任します。辞任後,専門職後見人から,親族後見人に対し,専門職後見人が管理していた財産の引継が行われます。
その後は、親族後見人が本人の財産管理も行うことになります。そして、親族後見人は、毎年家庭裁判所が指定された時期に本人の財産状況を報告するほか、財産に大きな変動があった場合には速やかに報告することになります。
3 親族後見人の財産管理について
信託した財産は信託銀行等において管理されます。親族後見人は,年金の受取や施設入所等のサービス利用料の支払といった日常的に必要な金銭を管理します。なお、本人の収入よりも支出の方が多くなることが見込まれる場合には,信託財産から必要な金額が定期的に送金されるようにすることもできます。
本人に臨時収入があった場合や、黒字が続いて管理すべき金銭が多額になった場合には、家庭裁判所に追加信託の報告をします。そして、追加信託が認められれば指示書が発行されますので、指示書を信託銀行等に提出して追加信託をします。なお、黒字が貯まって管理する金銭が多額になる見込みがあるにもかかわらず後見人から自主的な報告がない場合には、家庭裁判所から追加信託を求められることがあります。
4 費用について
後見制度支援信託を利用すると,通常,信託契約の締結に関与した専門職後見人に対する報酬と信託銀行等に対する報酬が必要となります。
専門職後見人に対する報酬は,家庭裁判所が,専門職後見人が行った仕事の内容やご本人の資産状況等のいろいろな事情を考慮して決めます。新規案件の場合は、20万円程度が目安となっています。
信託銀行等に対する報酬については,信託銀行等によって異なりますので、各信託銀行等のホームページ等をご覧ください。どの信託銀行等に信託するかは専門職後見人が決めることになっていますが、信託銀行等を決める際には、通常、親族後見人に対しても相談があるのが通常です。信託銀行等の最低受託金額や、料金体系、利便性等を考慮して、専門職後見人と話し合って決めると良いでしょう。
以上、後見制度支援信託についてご説明いたしました。
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