ネットトラブル⑥ 〜著作権侵害(2)〜
前回は、著作権について一般的なご説明をいたしました。
今回は、インターネットにおいて、著作権侵害が問題となるケースについて見ていきます。
1 ブログへの記事、書籍の転載
自分のブログに、他人の書籍や新聞記事をブログにすることは著作権侵害に当たらないでしょうか?
他人の書いた本、他人の書いた新聞記事は、いずれも言語の著作物に該当します。したがって、許諾を得ずに転載することは原則として著作権侵害に該当します。
しかし、著作物を「引用」する場合、要件を満たせば、許諾を得なくても著作権侵害に当たらないことがあります。では、「引用」の要件はどのようなものでしょうか。
著作権法32条1項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。」としており、「その引用は公正な慣行に合致するものであり、かつ報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない」としています。
まず、「公表された著作物」という要件がありますので、未公表の著作物はここには含まれません。
「公正な慣行」「目的上正当な範囲内」とはどのようなものか、わかりづらいですが、これらについては、裁判所の判断基準も明確にはなっていません。
判例(最判昭55.3.28)は、「引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区分して認識することができ、かつ、右綾著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならない」としています。ですから、引用して利用する著作物と、引用されて利用される側の著作物について、明瞭区分性、主従関係が認められなければなりません。
不必要に長く引用したり、どちらがブログの記事で、どちらが引用した記事かがわからないようなブログは、著作権侵害に該当すると考えられます。
なお、書籍の表紙については、書籍の中身と違い、言語の著作物には該当しません。イラスト等が描かれていれば、美術の著作物に該当します。表紙の写真をブログに転載する場合には、著作権違反になりえます。しかし、書籍の宣伝にもなりますし、損害賠償請求をする場合の「損害」がないとも考えられますので、裁判にまでなるケースは少ないと思われます。しかし、営利目的のブログ等に書籍の写真を転載するような場合には、無許可で転載することは避けた方が良いでしょう。
2 ネットオークションへの出品について
自己が所有する美術品をネットオークションへ出品するため、当該美術品の写真をインターネット上にアップロードしても良いでしょうか。
美術の著作物については、著作物の所有者やこれを譲渡したり貸与したりする権限のある者が、その作品や複製物を他人に譲渡しようとする場合には、複製または公衆送信を行うことができるとされています。もっとも、無制限に行える者ではなく、「著作物の複製を防止し又は抑止するための措置その他著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る」とされています。オークションサイトがこのような措置をとっているかどうかを確認した上で、アップロードした方が良いでしょう。
なお、自己が所有していない美術の著作物について、無断で写真をアップロードすることは著作権侵害(複製権、公衆送信権侵害)になります。
3 動画投稿サイトの利用
録画したドラマや映画、テレビ番組等を動画投稿サイトに無断でアップロードすることは、著作権侵害に当たることは容易に想像がつくと思います。
具体的にいうと、映画やドラマ、テレビ番組は著作権法上の「映画の著作物」にあたり、アップロードする行為は、複製権、公衆送信権等の著作権を侵害します。これらの行為については著作権者や放送事業者等から損害賠償請求をされる可能性があり、さらに、刑事罰を受ける可能性もないとは言えません。
また、自分が行ったコンサートを撮影し、その動画をアップロードすることも実演家の録音権等を侵害に該当します。
では、旅行に行った際の動画で、建築の著作物や彫刻が映っているものをアップロードすることはどうでしょうか。
「美術の著作物」であって、原作品が屋外に恒常的に設置されているもの、「建築の著作物」については、著作物を利用することができることになっています(著作権法46条)。したがって、上記の動画をアップロードする行為は著作権法違反にはなりません。美術館内に設置された彫刻を無断でアップロードすることは著作権法違反になります。また、屋外の設置であっても、その場所に入るのに入場料を支払わなければならない場合には、無断でアップロードすることは控えた方が良いでしょう。
4 書籍を電子ファイル化すること(いわゆる自炊)
書籍を裁断し、その本をスキャナーで読み取って電子ファイル化して利用している人も多いと思います。
このような行為については、個人的あるいは家庭内で利用する限りは、問題はありません。著作権法30条1項において、「個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用すること」を目的とする場合には、一定の場合を除いて、複製が許されるとされているからです。
したがって、読み取った電子ファイルを、業務のために社内で共有したり、友人へ譲渡したりする行為については、著作権法違反になります。
ここでは、ほんの数例を紹介しましたが、インターネットでの著作権のトラブルは数多く起きています。著作権侵害については、刑事罰を受ける可能性もありますから、自らの身を守るためにも、最低限の知識を持って著作物を利用するようにした方が良いでしょう。