ネットトラブル⑤〜著作権侵害(1)〜
インターネット上で、著作権が問題となるケースは数多くあります。
まず、著作権とは何か、インターネットでトラブルとなるケースはどのような場合かを、2回にわたってご説明いたします。
今回は、著作権とは何なのか、著作物とは何なのか等、著作権にまつわる一般的なご説明をしたいと思います。
1 著作物とは
(1)「思想又は感情」
著作物とは、「思想又は観光を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を意味します(著作権法2条1項1号)。
ここでいう「思想」「感情」は、格別に高尚なものであることは要求されていません。広い意味での人間の精神活動といったニュアンスです。例えば、琵琶湖の面積が670.4 km²であるといった客観的なデータは、「思想又は感情」には含まれません。機械を図面化する場合も基本的には「思想又は感情」とは解されませんが、誰が書いても同じようになる図面ではなく、その人独自のオリジナリティが発揮されていれば、「思想又は感情」を表現したものとみなされることもあります。
(2)「創作的に」
また、創作性も、独創性があると言ったことを意味するものではなく、従前から存在するものに比して、著作者の個性が何らかの形で現れていればよいとされています。
誰が書いても同様の表現となるようなありふれた時候の挨拶などは創作性を欠きますが、挨拶の文章にその作成者の個性が現れている場合には、創作性が認められる場合もあります(東京地判平7・12・18)。
(3)「表現」
表現までに至らず、その人の内心にとどまっている段階では著作物とは言えません。アイディアが言葉や音楽等で外部に表現されている必要があります。
(4)「文芸、学術、美術または音楽の範囲」
デザイン等の創作的ではあるが実用的な創作物については、意匠権で保護されています(応用美術と言われる分野で一部例外がありますが、インターネットではあまり問題になりません。)。著作権法で保護しているのは、文化的精神活動であって、その代表例が文芸、学術、美術または音楽です。
2 著作権、著作者人格権について
(1)著作権、著作者人格権
著作物を創作した人は、原則としてその著作物についての著作権および著作者人格権を有することになります(映画の著作物等で例外はありますが、ここでは割愛します)。
著作権は、著作物の財産的価値という側面に焦点を当てた権利であるのに対し、著作者人格権は著作者の作品に対する思い入れなど、人格的価値を保護するものです。
(2)著作権の種類
支分権とも言われますが、著作権には以下の種類があり、著作者はこれらの権利を有することになります。これらの権利を侵害する行為について、著作権侵害が成立しうることになります。
複製権
上演権
演奏権
上映権
公衆送信権
口述権
展示権
頒布権
譲渡権
貸与権
翻案権(著作物の創作性を維持しつつ、新たな創作性を加えるもの)
著作者ではないのに、その作品をコピーして販売することは複製権および譲渡権侵害になり得ますし、他人の作った楽曲を勝手に公の場で演奏する場合には演奏権侵害になり得ます。
また、著作権者の許可を得ずに替え歌をして公に発表することは、翻案権および演奏権侵害になり得ます(著作者人格権のうちの同一性保持権侵害にもなり得ます)。
もっとも、これらの行為に形式的に当たったとしても、例えば、家庭内でのみ使用するためにコピーをした場合などは、複製権侵害にはなりません。このように、著作権侵害に当たらないケースについても著作権法30条以下に規定されています。
(3)著作者人格権の種類
著作者人格権には、次の種類があります。
公表権
氏名表示権
同一性保持権
未発表の著作物を、著作権者ではないものが勝手に発表することは、公表権の侵害になります。
また、著作権、著作者人格権を双方侵害する場合もあります。例えば、未発表の作品に自らの手を加えて、原作品とは違った形で著作者の名前ではない者の名前で発表することは、翻案権、同一性保持権、公表権、氏名表示権を侵害することになります。
3 インターネットで著作権が問題となるケース
インターネットは誰でも見ることができます。また、インタ―ネット上の絵や音楽、写真等は簡単にコピーや書き加えが可能です。これらのことから問題となるケースが多いです。
具体的には、ホームページ上の写真の掲載や音楽の再生、ブログの記事に書籍の一文をそのまま掲載したりする場合も著作権侵害の問題になり得ます。また、ネットオークションに美術品を出品する際の写真の掲載、ドラマ・映画などをファイル共有ソフトで共有すること、動画投稿サイトへの投稿、書籍を電子ファイル化して共有すること(いわゆる自炊)など、インターネット上で問題となるケースは数多くあります。
これらの問題について、次回は具体的にご説明させていただきます。